シラス ストーリー
高千穂のシラス壁は、一切の化学物質を排除した100%自然素材。主原料は2万5千年もの間、人類と共存してきた火山噴出物シラスです。その他の副原料も、人間の生活の周りにある自然素材ばかり。人間が決めた基準値をクリアしただけの「安全性」とは比べ物にならない、「安心」の建材です。たぐいまれな天然資源であるシラスの特性を最大限に引き出し、これほど高機能な壁材にできたのも、100%自然素材へのこだわりがあったからこそ。高千穂のシラス壁は、住む人のことを第一に考えてつくった壁材です。
シラス壁の主原料・シラスが誕生したのは約2万5千年前。南九州の姶良カルデラの噴火によって発生した巨大火砕流が堆積し、広大なシラス台地を形成しました。シラス地層は厚い部分で150mにもなります。南九州では、シラスは農耕の適さず、豪雨の際に土砂崩れを起こすなど、災害を引き起こす「厄介もの」として嫌われてきました。私たちはこのシラスに着目し、壁材として活用するための研究開発を進めるうちに、シラスが驚くべき機能を持つ特殊な素材であることがわかってきました。
シラスは非常に細かい微粒子の中に無数の穴が開いた多孔質な構造を持っています。シラスの主成分である珪酸は、除湿材の主原料でもあり、これによってシラス壁には優れた調湿機能があります。また、シラスに含まれるアルミナはガスの吸着機能が高く、シラス粒子中の空洞にニオイや化学物質の分子を吸着し、再放出しない特性があります。人口では造ることができない、この極めて複雑な構造と成分構成は、マグマから生まれた物質だからこそ成しえた奇跡といえます。
シラスは、マグマの超高温で焼成された高純度無機質セラミック物質であることから、私たちはこれを「マグマセラミック」と呼んでいます。また、シラスは非晶質の占める割合が60%~80%もあることで、他の火山噴出物とは決定的に異なる極めて特異な性質をもっています。非晶質の場合、分子構成が不安定で活性化し、環境によって触媒反応が起きやすくなることから、消臭・分解、殺菌、イオン化などの機能を発揮すると考えられています。
古代ローマでは、シラスと同様の火山噴出物が古代コンクリートに使われていました。1900年もの時を経て今なお姿を残すローマ建築が、マグマ素材・シラスの耐久性を物語っています。
高千穂シラスの九州工場は、南九州ののどかなやまざとにあります。年々増加
するシラス壁の需要に対応するためには生産設備の拡大が必要でしたが、ここ
に大規模工場を建設すれば、豊かな自然環境を損なうことになってしまいます。そこで創設したのが、「新二毛作の会」。地元農家の皆さんに、農作業の合間
にシラス壁材のミキシングや袋詰め作業を担当してもらっています。地域の皆
さんと自然環境の共生を図る、独自の生産委託システムです。また、このシス
テムは高齢化が進む農村に雇用を創出し、副収入をもたらすことによって、主
業である農業や林業を持続でき、一次産業の維持育成にもつながっています。
シラスはサラサラとした砂のような粒子です。石のように切り出す珪藻土など
と違って採取に手間がかからず、大型機械で粉砕する工程が不要です。また、
採取したシラスから余分な水分を取り除く工程では天日乾燥を用いており、焼
成工程もありません。できるだけ機械に頼らないローテク製法でつくる高千穂
のシラス壁は、製造時に大きなエネルギー消費がなく、地球環境への負荷を抑
えたエコ建材です。
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